JARO 公益社団法人 日本広告審査機構

JARO 公益社団法人 日本広告審査機構

メニュー

とじる

新着情報What's New

2023年12月20日お知らせ消費者向け

2023年度上半期の審査状況(HTML版)
不適切なNo.1表示は「見解」9件に含まれる

2023年度上半期の審査状況
不適切なNo.1表示は「見解」9件に含まれる

◇ 総受付件数は減少、前年同期比87.2%
◇ 業種別の苦情:今期最多は医薬部外品、オンラインゲームと買取・売買が増加
◇ 媒体別の苦情:上位2媒体は2021年度下半期から同様の推移
◇「見解」17件中、医薬部外品5件、媒体はインターネット16件
◇ 2023年度上半期のトピックス
   * 不適切なNo.1表示は「見解」9件に含まれる
   * 定期購入契約は「見解」6件に含まれる
   * 性的な広告表現の苦情

総受付件数は減少、前年同期比87.2%

2023年度上半期は、総受付件数が5,583件で前年同期比87.2%と1割余り減少した。内訳は、苦情4,437件(前年同期比91.6%)、照会842件(同72.6%)、称賛6(同100.0%)、JARO関連50件(同104.2%)、広告以外248件(同71.3%)だった。

苦情は、2019年度下半期ごろからネット上の不適切な広告・表示に対するものが増加し、その後の新型コロナ感染拡大の影響などもあって2020年度を中心に増加していたが、今期は増加前の2019年度上半期(4,501件)と同じ程度となった(グラフ)。苦情の減少傾向は継続したが、前年同期に比べ減少幅は縮小した。(2022年度上半期の苦情の前年同期比86.6%)

主に事業者からの相談である照会は、いくつかの会員社からの相談減少により、前年同期比72.6%と減少した。

業種別の苦情:今期最多は医薬部外品、オンラインゲームと買取・売買が増加

増加が目立ったのはオンラインゲーム、買取・売買などで、減少したのは化粧品、電子書籍・ビデオ・音楽配信、団体などだった。

最多の医薬部外品は育毛剤であるのに発毛効果の表現、薬用化粧品でシミが取れるかのような表現に対して誇大であるとの意見が寄せられた。今期は1割ほど減少したが2022年度上半期から最多が続いている。

オンラインゲームは主に2つのゲームへの苦情が増加し、アニメで描かれる少女の服装や声が不快、人身売買や児童買春を想起させるなど表現に関する苦情が多かった。化粧品は99件減少したが、引き続きシミが取れるかのような医薬品的な効能効果や毛穴汚れに関する不適切な加工写真などに苦情が寄せられた。

買取・売買は「何でも高価買取」「着物を高価買取」「短時間で査定」などの広告が実際と異なるという苦情のほか、「不祥事のあった企業の広告がいまだに出ている」というものが多かった。買取・売買はコロナ下での買取需要により広告への苦情が増加し、2021年度をピークにその後減少したが、今期はまた増加傾向にある(通期件数:21年度299件、22年度201件)。なお、買取サービスは景品表示法の規制対象外とされているが、2022年開催の景品表示法検討会において広告に起因する消費者トラブルが起きていることを踏まえ、景品類指定告示運用基準の改定が提案されている。

近年、脱毛に関する苦情が増えているが、今期は68件(前年同期62件)で、内訳はエステティック48件(同47件)、医療・病院12件(同11件)だった。相談者は男性46件(同38件)、女性22件(同24件)で、媒体は68件中66件(同54件)がインターネット。

医薬部外品、化粧品、健康食品の推移はグラフの通りで、業界や行政の取り組みも進み全体的に減少傾向にある。

苦情業種別件数の表。医薬部外品、化粧品、健康食品、携帯電話サービス、専門店の順。

媒体別の苦情:上位2媒体は2021年度下半期から同様の推移

媒体ごとに業種内訳を見ると、インターネットの上位は医薬部外品189件(前年同期191件)、化粧品126件(同207件)、電子書籍・ビデオ・音楽配信108件(同134件)の順で、特に化粧品の減少が大きい。増加したのは健康食品(保健機能食品以外)91件(同57件)、医院・病院65件(同32件)などだった。

インターネットの内訳は、自社サイト460件(同530件)、通信販売サイト416件(同442件)、SNS等のインフィード414件(同420件)などが多く、表示形式では動画が357件(337件)と増加した。アフィリエイトは147件(同147件)で同数だった。

テレビの上位はオンラインゲーム81件(同35件)、医薬品77件(同46件)、団体76件(同106件)で、オンラインゲームについては前述のCMに55件寄せられた。そのほか、前述した買取・売買73件(同44件)や、「CM内の音が緊急地震速報と誤認する」などの苦情が寄せられたBtoB商品・サービス66件(同34件)などが増加した。

ラジオの上位は相談業務56件(同27件)、買取・売買25件(同6件)、団体15件(同10件)となった。買取・売買は前年同期にいったん減少したが、今期は増加となった。交通は美容医療を勧める内容の書籍広告に対して苦情が寄せられた。屋外については前年同期にゲーム関連グッズ販売店のアドトラックに60件寄せられ急増していたため、今期は大きく減少した。

上位2媒体は、コロナ下の2020年度上半期に急増したが、その後、2021年度下半期からは2媒体がほぼ同じ件数で推移している。 

内容別の苦情:インターネットは表示、テレビは表現が6割以上を占める

前述のとおりインターネットとテレビの上位2媒体は苦情件数がほぼ同じだが、内容別に見ると大きく異なる。インターネットは表示1,348件、表現452件、手法167件であり、最も多い表示は68.5%を占めた。テレビはそれぞれ552件、1,286件、82件と、表現が67.0%を占めた。

内容別(全媒体)は次のとおり。

表示関連では化粧品の減少が目立ち、「価格・取引条件等」29件(前年同期71件)、「品質・規格等」65件(同89件)だった。医院・病院は美容医療の料金に関する苦情が増加し「価格・取引条件等」が44件(同19件)となった。

表現関連では、電子書籍・ビデオ・音楽配信では電子コミック配信を中心に音・映像が増加し、オンラインゲームは137件(同72件)とほぼ倍増した。一方、医薬部外品、化粧品、健康食品(保健機能食品以外)が減少した。

手法については、オプトアウトができないことに関して媒体インターネットに167件(同152件)と若干増加し、不祥事があっても広告を続けているとの苦情が寄せられ買取・売買が24件(同1件)と増加した。

表現や手法は増減幅があまり大きくなく、近年では表示案件の増減が総件数に影響している(グラフ)。2019年度から増加していた表示が落ち着いてきており、今期は表示・表現の差が縮小した。

苦情申立者の年代・性別:60代以上のオンライン受付が増加

苦情申立者を年代で見ると、10代~50代までは減少し、60代・70代以上が増加した。

60代は育毛剤や歯磨き剤など医薬部外品や化粧品に対して、購入したが効果がない、定期購入だったという、購入後の苦情が増加した。

「見解」17件中、医薬部外品5件、媒体はインターネット16件

業務委員会で審議した結果、今期は17件に「見解」を発信した(前年同期13件)。内訳は厳重警告10件(同6件)、警告6件(同6件)、要望1件(同0件)、助言0件(同1件)で、より重い厳重警告と警告がほとんどを占めることとなった(審査結果分類基準の説明は6ページ)。17件中、医薬部外品が5件(同2件)ですべてが厳重警告、媒体についてはインターネットが16件(同12件)を占めた。

今期は不適切なNo.1表示を含むものは9件、アフィリエイトが絡む事例は8件、定期購入事例は6件あった。アフィリエイトなど第三者が関与する事例では、広告主に苦情照会すると「アフィリエイターが作成した」と回答されるケースがあるが、今期アフィリエイトが絡んだ事例については、景品表示法の観点から第三者が作成した表示についても広告主が責任を負う旨を説明し、広告主に「見解」を発信した(No.2、3、4、6、7、8、14)。

「見解」とは別に、審議の俎上には上がらないが対応が必要とする「事務局文書発信」は、今期9件発出した。

2023年度上半期の厳重警告・警告一覧 ( )内は媒体

≪厳重警告≫
1.SNS上の広告に「衝撃の7〇歳!?」とあるが実在しない人物であり、虚偽の体験談や「シワ97%改善」など承認を受けた内容を逸脱する効能効果をうたっていた医薬部外品の美容液(インターネット〈SNS上のディスプレイ広告、中間ランディングページ、自社販売サイト〉)
2.1本無料で試して解約できる旨をうたいながら解約条件により無料で試せず、有効成分以外の成分の効果、効果の保証表現などをうたっていた医薬部外品の育毛剤(インターネット〈アフィリエイトサイト、自社販売サイト〉)
3.届出表示は「エラグ酸には、肥満気味な方の体重(略)の減少をサポートし、高めのBMI値の改善に役立つことが報告されています」であるのに、「3週間で脂肪が激減」などと逸脱した表示をしていた機能性表示食品(インターネット〈アフィリエイトサイト、自社販売サイト〉)
4.「飲むだけで15kg痩せる薬」などと痩身効果をうたったコーヒー健康飲料(インターネット〈アフィリエイトサイト、自社販売サイト〉)
5.「全身トライアル脱毛 初回1,980円 12カ月無料体験」とうたっているが、実際には1,980円+シェーバー代1,000円が12回かかるものだった脱毛エステティックサロン(インターネット〈自社公式サイト〉)
6.シミがはがれるかのような表示をしていた医薬部外品のクリーム(インターネット〈アフィリエイトサイト、自社販売サイト〉)
7.「医薬品にも使われる成分を使うらしい」「毛穴が9割減少」などと逸脱した効果をうたった化粧品の洗顔料(インターネット〈SNS上の動画広告、アフィリエイトサイト、自社販売サイト〉)
8.「ニキビ肌が綺麗なツルツル肌になった」などと効果や体験談、使用前後写真を掲載した医薬部外品のクリーム(インターネット〈アフィリエイトサイト、自社販売サイト〉)
9.「通い放題3カ月集中9,800円」などとうたっているが、総額18万~30万円かかる減量コース受講後の維持期間の料金にすぎなかったエステティックサロン(インターネット〈自社公式サイト〉)
10.「たった1回で」「髪を黒くしたい人」などと黒髪が生えるかのように表示をしていた医薬部外品の育毛剤(インターネット〈バナー、中間ランディングページ、自社販売サイト〉)

≪警告≫
11.「本物の健康茶」「血液をきれいにする効果」などとうたった健康茶(インターネット〈自社公式サイト〉
12.上記11の健康茶の販売会社(インターネット〈自社販売サイト〉)※11は製造元
13.「7日間限定」と特価をうたった電気シェーバーがおとりのおそれがあるものだった(折込)
14.鼻の角栓をピンセットでつまみ出すような表現や化粧品で認められた効能効果の範囲を逸脱する表示をした化粧品の洗顔料(インターネット〈ゲームアプリ内の動画広告、アフィリエイトサイト、自社販売サイト〉)
15.上記14のアフィリエイト事業者(インターネット〈ゲームアプリ内の動画広告、アフィリエイトサイト〉)
16.「頭皮の血行不良が改善」などと医療機器のような効果をうたった枕(インターネット〈自社販売サイト〉)

審査結果の定義(2020年6月18日公表「JARO審査基準改定について」から)
【厳重警告】 警告相当の広告または表示であって、問題箇所の数、消費者に誤認を与える程度等により、その不当性が特に高いと認められることから、当該広告または表示を直ちに削除または修正することが必要と認められるもの。
【警告】 広告または表示が、実際のものより著しく優良・有利に表現され、消費者に誤認を与えるもの、または広告・表示関係法令に抵触することが明らかであることから、当該広告または表示の速やかな削除または修正を求めることが必要と認められるもの。
【要望】 広告または表示が、実際のものより著しく優良・有利に表現され広告・表示関係法令に抵触する疑いがあるもの、または消費者の誤認を招くおそれがあることから、当該広告または表示の削除または修正を求めることが必要と認められるもの。
【助言】 広告または表示が、消費者の誤解を招く、または社会的・道義的問題等を有する可能性があるため、修正等の検討を求めることが必要と認められるもの。(従来の「提言」から名称変更)

2023年度上半期のトピックス

不適切なNo.1表示は「見解」9件に含まれる

昨年、適切な調査に基づかないNo.1表示が問題となったが、今期の「見解」発信事例でも9件(見解No.1、3~9、14)に含まれていた。(2021年度3件=厳重警告2・警告1、2022年度8件=厳重警告3件・警告5)
日本マーケティング・リサーチ協会が2022年1月にウェブサイトに抗議状を公開したあと、同協会はガイドライン策定やイメージ調査による「満足度No.1」等表示の調査・提言を行っており、また消費者庁や県による措置命令も出されているが、依然として問題表示が続いている。
今期の「見解」事例でも、No.1表示の根拠を事務局から広告主に照会したところ、「多くのお客様にご愛顧いただき3冠受賞!」という表示はブランドイメージ調査であり、表示内容に合った調査ではなかった(厳重警告6)。「〇〇(大手通販サイト)第1位売れ筋ランキング」の根拠として示されたのは、〇〇の欲しい物ランキングであり売れ筋ではなかった(厳重警告7)。また、「〇〇(別の大手通販サイト)ランキングNo.1」はある週の週間1位であり、ごく短期間のものだった(同)。
「顧客満足度第1位」と表示した事例では、言葉遣いや表情、店内のクリンリネスなどを調査員が覆面調査し、同調査を受けた100店舗以上の中で1位だったというものであり、「施術」を受けていない1人の調査員による特定の1店舗の評価だった。また当該調査は5年以上前に実施したものだった。(厳重警告9)
※消費者からの苦情の主訴は定期購入や効能効果など別の問題であることが多く、JAROが審議過程で不適切なNo.1表示を把握するケースがほとんどである。そのため、No.1表示についてはJAROで認知できた件数となる。

定期購入契約は「見解」6件に含まれる

定期購入契約の苦情は135件あり(認知件数)、前年同期より若干減少したが、医薬部外品や健康食品(保健機能食品以外)では増加した。今期「見解」中6件に含まれていた(見解No.2、3、6、7、9、10)。

性的な広告表現への苦情

主に女性を性的に描いた表現の広告に対して、JAROには相当数の苦情が寄せられており、オンラインゲームと電子コミック配信が多くを占めている。
2019年4月以降の苦情を類推するキーワード(性的、卑わい、性表現など)で抽出すると件数は表のとおりで、4年半で計1,633件あった。媒体はインターネット1,137件、テレビ427件などであり、業種では電子書籍・ビデオ・音楽配信363件(うち電子コミック配信321件)、オンラインゲーム312件、化粧品98件、健康食品(機能性表示食品以外)77件、医薬部外品62件などとなっている。
「女性の卑猥な身体の広告は気持ち悪く不愉快」「こういった性的なものは年齢制限のないサイトでは出さないでほしい」「特殊性癖の性行為を載せた漫画広告はアダルトサイト以外に載せないでほしい」などと不快感や掲載場所に関して苦情が寄せられている。
このほか、子どもへの性的虐待や猟奇的な描写など残虐な表現についても苦情が寄せられており、インターネット上のオンラインゲームや電子コミック配信、出版物などが多い。

JAROについて
名称      公益社団法人日本広告審査機構(JARO)
事務局住所   東京都中央区銀座2-16-7 恒産第1ビル
理事長     西澤 豊
設立      社団法人許可1974年10月15日、公益社団法人認定2011年4月1日
会員数     887社(2023年12月現在)