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2022年12月12日広告トピックお知らせ

REPORTJARO記事「審査トピックス サブスクを装った役務提供契約」公開のお知らせ

JAROで発行している機関誌『REPORT JARO』は一般公開しておりませんが、2022年3月に「広告表現 人種的・文化的ステレオタイプを考える」の公開を試みました。それに続く試行として、12月号掲載記事「審査トピックス サブスクを装った役務提供契約」を公開することといたしました。
ご覧いただければ幸いです。

審査トピックス 「サブスク」を装った役務提供契約

音楽や映像配信サービス等で「サブスク」という言葉を聞くことが多くなった。これは「サブスクリプション」の略であり、英語の「サブスクリプション」は「予約購読」「会費」などの意味を持つ。いわゆる「サブスク」の正式な定義は定まっていないが、一般的には月々一定額を支払う、定額制でサービスを利用できるビジネスモデルを指すと思われる。
 ところが、最近、「月々○円」「月額○円」など、いわゆる「サブスク」を想起させる広告・表示でありながら、実際にはサービス提供期間が終わった後も長期の支払いが残るローン契約であった、高額な中途解約金がかかった等の相談が増えている。

【事例1】
ヒゲ脱毛エステティックサービス
~実際は3年のローン契約だった~

 SNSに、ヒゲ脱毛エステティックサービスの動画広告が出てきた。月額980円で最短2回と強調されており、リンク先の美容記事風広告にも同様に表示されていた。しかし、店舗に行って説明を受けたところ、実際は約3万6000円のコースの36回分割払いで、施術が受けられるのは6カ月に1回だった。

 SNS上に表示された広告を確認したところ「ヒゲ脱毛が月額たったの980円」とのみ表示されていた。SNSの広告からリンクした美容記事風広告内では「月額980円」「最短2回」に近接して「※総額3万5280円(税込み)の特別コース(詳細最下部)」と小さく表示されているものの、当該表示からは総額しか分からず、「980円」が総額3万5280円を36回分割払い(3年間)にした場合の1回分の支払いであること、脱毛2回は6カ月に1回のペースで通うことなどの情報は、広告の最下部に小さく表示されているのみであった。
 消費者が商品の売買契約や役務提供契約を締結する際、信販会社が消費者に代わって販売会社に代金の支払いをし、後日、消費者が2カ月を超えて信販会社に代金を支払うことを「信用購入あっせん」という。このケースは「個別信用購入あっせん」に該当する。
 個別信用購入あっせんによる支払い例として「月額980円」などと広告に表示する場合は、割賦販売法(以下、「割販法」という)で取引について表示しなければならない事項が定められている。バナー広告等、表示スペースが狭い広告であっても表示義務がある。

割賦販売法第35条の3の2第2項
①現金提供価格
②支払い総額(商品もしくは権利を販売する場合の価格または役務を提供する場合の価格および個別信用購入あっせんの手数料の合計額)
③支払いの期間および回数
④手数料の料率(0.1%の単位まで。ただし、手数料が2500円未満のときは表示しないことができる)
 JAROでは割販法の表示義務違反のおそれと併せ、景品表示法(以下、「景表法」という)第5条第2号(有利誤認)に抵触するおそれを指摘した。

【事例2】
ファッションレンタルサービス
~実際は1年間の契約を、クレジットカードで2年にわたり分割払いする契約だった~

 ファッションレンタルサービスのメルマガに登録していたところ「最初の2カ月0円キャンペーン、3カ月以降実質2980円/月」のメールが届いた。月額2980円で試せるならと思い申し込んだが、実際には1年間の利用料7万8672円を24回の分割で支払う契約だった。契約条件が小さい文字で書かれていたため、気が付かなかった。

 メールマガジンおよび公式サイトの表示を確認したところ、当該キャンペーンについて「はじめの1年間 初回0円+2カ月目0円+3カ月目以降2980円/月」を強調していた。ところが、実際は1年契約であり、支払総額は税抜き7万1520円(税込み7万8672円)であることや「3カ月目以降2980円/月」は、24回払いにした場合の1回分の税抜き支払金額であることは、離れた場所に小さな文字で書かれていた。
 申し込み画面においても、「最初の1年間 2カ月0円+月々2980円キャンペーン」を太字で強調する一方、契約期間、総額等、詳しい条件はその下に薄い色の小さな文字で表示されており、極めて視認性が悪いものであった。当該キャンペーンの支払いはクレジットカードに限られ、消費者は申し込み画面で支払い回数を選択可能だが、各回の支払い額は表示されず、支払い総額も明瞭に認識することができないまま、申し込みボタンを押す仕様になっていた。
 当該契約は割販法の信用購入あっせんのうち、信販会社が発行するクレジットカードを用いる「包括信用購入あっせん」に該当する。「包括信用購入あっせん」の場合、サービス提供事業者の広告表示義務事項は定められていないとはいえ、料金表示が分かりにくい。
 JAROでは景表法第5条第2号(有利誤認)、消費税法第63条(総額表示)、特定商取引法(以下、「特商法」という)第12条(誇大広告等)第14条第1項第2号(意に反する申し込みをさせようとする行為)に抵触するおそれがあることを指摘した。

【事例3】
家電レンタルサービス
~中途解約しても残存期間の料金を支払う必要があった~

 SNS上のインフィード広告で「家電のサブスク」と表示しているが、実態はいつ中途解約しても残契約期間の分も違約金として支払わせる契約である。少額で必要なときだけ利用できると勘違いさせている。

 広告では「月額780円~初期費用ゼロ サブスクで最新のおしゃれ家電をレンタル」などと表示されていた。リンク先の公式サイトで希望の商品を選択した申し込み画面には「契約期間5年」「780円(税込み)/月」という表示のみで、諸条件の記載はなかった。さらに商品をカートに入れ、個人情報やカード情報を入力した「ご注文内容最終確認」の画面に「解約違約金が発生する」旨の表示はあるが、具体的な金額は表示されていなかった。中途解約金の額を知るためには、サイト最下方のサービス利用規約を開き、さらにその最下部の中途解約金へのリンクを開く必要があり、ようやく「残契約月数×月額利用料金」であることを確認することができた。
 JAROでは景表法第5条第2号(有利誤認)、特商法第12条(誇大広告等)に抵触するおそれがあることを指摘し、表示が改善された。

***

 事例2と3は、役務の通信販売なので特商法の規制を受ける。6月1日に施行された同改正法では、法第11条の義務表示事項に「役務提供契約に係る申込みの撤回又は解除に関する事項(第5号)」が追加されている。
 また、事業者が設定した様式に従って申し込みを行う場合(特定申込)には、最終確認画面において契約内容を網羅的に表示する義務が課せられた(法第12条の6第1項)。さらに、この最終確認画面において消費者が誤認して契約を行った場合には契約を取り消すことができる規定も追加されている(法第15条の4)。
 なお、事例2、3は法改正前の契約だったため、法改正後は問題となるおそれがあることを付記し、注意喚起を行った。
 今後は、ますます役務の通信販売が多様化し、また支払い方法も多様化することが予想される。事業者は、消費者の誤認を招くことがないよう、サービスの内容や諸条件について、分かりやすく適正な広告・表示が求められる。

PDF版はこちら

「審査トピックス サブスクを装った役務提供契約」(PDF・1947KB)

《ご参考》

2022年3月8日公表 REPORTJARO記事「広告表現 人種的・文化的ステレオタイプを考える」公開のお知らせ