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2022年12月9日お知らせ消費者向け

2022年度上半期の審査状況(HTML版)

2022年度上半期の審査概況

◇総受付件数は減少、前年同期比88%
◇苦情業種別:「化粧品」大幅減も、著しく不適切なもの依然減らず
◇苦情媒体別:「インターネット」は2割減、「テレビ」は前年同期並み
◇「見解」13件発信 不適切なNo.1表示、サブスクと誤認させる割賦販売など
◇2022年度上半期のトピックス
  ・不適切なNo.1表示、今期も「見解」8件
  ・サブスクのように誤解させる役務提供契約に「見解」5件
  ・二段階契約による悪質な定期購入

総受付件数は減少、前年同期比88%

2022年度上半期(2022年4月~9月)に受け付けた苦情・照会などの総件数は6,405件で、前年同期比87.8%と減少した。コロナ禍の2020年度上半期から2021年度上半期まで苦情が増加していたが、今期はコロナ前の2019年度同期と同じくらいの水準となった。内訳を見ると、「苦情」4,844件(前年同期比86.6%)と「照会」1,159件(同88.0%)がともに減少し、その他、広告への好評な意見である「称賛」6件(同150.0%)、「JARO関連」の意見・問い合わせ48件(同78.7%)、「広告以外」348件(同110.1%)となった。
受付経路別では、「電話・FAX等」は117件の減少にとどまったが、ウェブサイト上の送信フォーム経由の「オンライン」は770件減少した。

苦情 業種別:「化粧品」大幅減も、著しく不適切なもの依然減らず

「苦情」の業種別件数は表のとおりで、前年度に多く寄せられていた「医薬部外品」「化粧品」は減少したものの1位・2位となった。
「医薬部外品」は美容健康商品が約8割を占め、育毛剤の発毛効果や薬用化粧品でシミがはがせるかのような描写に苦情が寄せられた。残る2割ほどは、害虫駆除剤や口中洗浄液、生理用品などであり、害虫駆除剤の広告表現が不快であるとの意見が目立った。「化粧品」は2020年度から鼻の角栓や目の下のたるみなどバナー広告の画像に不快感を訴える意見が増加していたが、それらが減少したため今期はほぼ半減となった。しかし、医薬品的な効能効果をうたうなどネット通販の著しく不適切なものはあまり減少していない。「健康食品」は2020年度下半期に急減して以降、さらに件数は減っている。
そのほか増加が目立ったものとして、「専門店」はゲーム関連グッズ販売のアドトラックが、風俗店の求人あっせん広告を模した表現であることに不適切であるとの苦情が集中し、前年同期比206.4%となった。「医院・病院」は、美容外科手術を安易に勧めたり、施術を具体的に見せる表現に対して不快感や子どもへの影響を懸念する苦情が寄せられ、181.4%となった。表にはないが、「音響機器」のテレビCMについて、次々と色が切り替わる画像がチカチカするとして、気持ちが悪くなるとの意見や、過去の事故を挙げて子どもへの影響を懸念する声が寄せられた。
一方で例年多く寄せられていた「オンラインゲーム」は半減となった。苦情が多かった特定のゲームの苦情が92件から3件と減少した。また、消費者庁の景品表示法検討会でも取り上げられた「買取・売買」は、コロナ状況下の需要増に伴って苦情が増えていたが、今期は106件(前年同期比60.6%)と減少した。

苦情 媒体別:「インターネット」は2割減、「テレビ」は前年同期並み

「苦情」の媒体別件数は「インターネット」「テレビ」「ラジオ」の順で、2019年度からこの順位が続いている。順位は変わらなかったものの、件数は「インターネット」が2割減、「テレビ」はほぼ前年同期並み、「ラジオ」は4割減となった。(「インターネット」は広告だけでなく、企業公式サイトや通販サイトなどの表示も含む)
「苦情」全体の8割以上を占める上位2媒体は、「インターネット」2,156件、「テレビ」2,111件とほぼ同じだった。「インターネット」の内訳をみると、上位業種は「化粧品」207件(前年同期437件、前年同期比47.4%)、「医薬部外品」191件(同225件、84.9%)、「電子書籍・ビデオ・音楽配信」134件(同121件、110.7%)、「オンラインゲーム」77件(同228件、33.8%)であり、化粧品、オンラインゲームの減少が顕著だった。「化粧品」については、2020年度~21年度に多数寄せられた鼻の角栓や歯の汚れ、目の下のたるみなどのバナー画像が気持ち悪いという苦情が、また、「オンラインゲーム」については広告とゲーム内容が異なるという声が多数寄せられていた特定タイトルの苦情が、それぞれ減少した。
「テレビ」の上位業種は「携帯電話サービス」106件(同187件、56.7%)、「団体」106件(同62件、171.0%)、「自動車」85件(同63件、134.9%)、「音響機器」76件(同4件、1900.0%)、「医薬部外品」76件(同126件、60.3%)となった。団体は複数の啓発CMに意見、自動車はCM内での音声により自宅の機器が作動してしまうとの意見が寄せられ、音響機器については前述のとおり次々と色が切り替わるCMに集中して意見が寄せられた。
その他、「ラジオ」は「比較サイト」や「健康食品」が増加したが、従来苦情の多かった「買取・売買8件(同52件、15.4%)、「相談業務」27件(同39件、69.2%)などが減少して媒体別件数が前年同期の6割ほどとなった。「屋外」は前述のゲーム関連グッズショップのアドトラックが60件(同0件)寄せられ、媒体別6位となった。

苦情申立者の年代・性別、女性が増加傾向

苦情申立者の年代・性別内訳は表の通りで、多くの属性で前年同期より減少となった。増加したのは50代~70代以上の女性である。
男女比は61.8%対37.9%であり、前年同期と同じ割合となった。徐々に女性の割合が増加しており、10年前(2012年度通期)に7対3だったものが6対4に近づいている。また、受付経路別で見ると、女性は「電話・FAX等」(33.6%)より「オンライン」(39.3%)の方が高い。
年代別では、前年同期に40代が最も多かったが、今期は40代・50代がほぼ同水準となった。男性では50代→40代→30代の順で多く、女性では40代→30代→50代の順となっている。

音や画像に対する不快感が目立つ

「苦情」は申し立て内容別に、(1)表示、(2)表現、(3)広告の手法に分類しており、最も多いのは(1)表示で、苦情の52.9%を占める。「音・映像」「差別・ジェンダー」のみが前年同期を上回り、他の項目は減少となった。
(1)表示は例年、「価格・取引条件等」と「品質・規格等」の双方に一定の件数が集まっている。2019年度までは「価格・取引条件等」のほうが多かったが、2020年度から「品質・規格等」が上回り、今期まで続いている。前者で多いのは専門店、携帯電話サービス、買取・売買、教室・講座などで、後者が多いのは医薬部外品、外食など。化粧品については両方が多かった。
(2)表現の「音・映像」は「音がうるさい」「画像が気持ち悪い」といった苦情であり、今期最も苦情が多い項目となった。医薬部外品や化粧品のほか、携帯電話サービス、団体、オンラインゲーム、医院・病院、音響機器などの業種は「音・映像」の割合が高かった。「カラフルな画像が次々切り替わり、かつてアニメ番組を見て子どもが倒れた事故を思い出す」「バイブレーションやインターホンの音が自分のものと混同する」「CM内の音声により自宅のAIスピーカーが作動してしまう」「鋭利なものでまぶたを押して二重にする映像が不快」といった意見が寄せられた。
「差別・ジェンダー」は、前述のゲーム関連グッズ販売のアドトラックの事例で、「未成年アイドルが登場し未成年ユーザーもいるのにこのパロディは問題があるのではないか」との意見が目立った。そのほか、医薬部外品の「性的に表現していて不快」や、出版物の「女子高生を性的対象として扱う内容の広告を、多くの人が目にする新聞に掲載するのは不適切ではないか」などの意見があった。
(3)広告の手法で目立ったのは、「士業のCM放送数が多すぎる」「特定の電子コミックのバナー広告がオプトアウトできずウェブサイトに飛ばされる」などがあった。

「見解」13件 不適切なNo.1表示、サブスクと誤認させる割賦販売など

今期は13件を審議し、「厳重警告」6件、「警告」6件、「要望」0件、「助言」1件に対して「見解」を発信した(前年同期はそれぞれ7件、3件、6件、0件、計16件)。対象となった商品・サービスは、例年多い医薬部外品や化粧品だけでなくさまざまなものを扱った。媒体別は「インターネット」が12件を占めた。

2022年度上半期の厳重警告・警告一覧 ( )内は媒体

≪厳重警告≫
1.口内細菌の99%を除菌するなどとうたった健康食品(インターネット〔自社サイト、自社販売サイト、オンライン通販モール〕、商品パッケージ)
2.回数しばりのない契約で購入ボタンを押下すると、直後に「さらにお得に購入できる」と表示して契約させるが、2度目の契約は回数しばりのある定期契約になっている化粧品(インターネット〔自社販売サイト、注文内容確認画面、注文完了画面〕)
3.「月々料金で通い放題」「月々〇千円~」と月謝制のような表示をしているが、実際は分割払いの月額だったゴルフ教室(インターネット〔アフィリエイトサイト、自社サイト〕)
4.「業界最安値」「月々〇千円~」と月謝制のような表示をしているが、実際は何十万円かの契約で分割払いの月額だったパーソナルトレーニングジム(インターネット〔SNSバナー、アフィリエイトサイト、自社サイト〕)
5.月額千円程度で最短2回とうたっているが、千円程度になるのは数万円のコースを36回払いにした金額だったヒゲ脱毛の男性用エステサロン(インターネット〔SNS動画、記事広告〕)
6.エステの〇倍のパワーで脂肪を破壊などとうたった医療機関(インターネット〔SNS広告、記事広告、自社サイト〕)

≪警告≫
7.「コストパフォーマンス〇〇県内No,1」などの表示が、根拠となる調査と合っていないハウスメーカー(ミニコミ誌、インターネット〔自社サイト〕)
8.医療従事者注目度No.1などとうたった医薬部外品のフェイシャルパック(インターネット〔自社販売サイト〕)
9.アトピー性皮膚炎への効果をうたった温泉情報が書かれた同じページに、その温泉成分が配合されていると紹介・販売されている化粧品(インターネット〔自社販売サイト〕)
10.卵殻膜が有効成分であるかのような表示をした薬用化粧品(インターネット〔自社販売サイト〕)
11.サブスクで安価にレンタルできるかのようにうたっているが、複数年の契約期間があり、中途解約すると違約金として残額を支払う必要があった家電レンタルサービス(インターネット〔広告主公式アカウントのSNS投稿、自社サイト〕)
12.コーヒーで痩せる、製薬会社が本気で作ったなどとうたった健康食品(フリーペーパー)

審査結果の定義(2020年6月18日公表「JARO審査基準改定について」から)
【厳重警告】 警告相当の広告または表示であって、問題箇所の数、消費者に誤認を与える程度等により、その不当性が特に高いと認められることから、当該広告または表示を直ちに削除または修正することが必要と認められるもの。
【警告】 広告または表示が、実際のものより著しく優良・有利に表現され、消費者に誤認を与えるもの、または広告・表示関係法令に抵触することが明らかであることから、当該広告または表示の速やかな削除または修正を求めることが必要と認められるもの。
【要望】 広告または表示が、実際のものより著しく優良・有利に表現され広告・表示関係法令に抵触する疑いがあるもの、または消費者の誤認を招くおそれがあることから、当該広告または表示の削除または修正を求めることが必要と認められるもの。
【助言】 広告または表示が、消費者の誤解を招く、または社会的・道義的問題等を有する可能性があるため、修正等の検討を求めることが必要と認められるもの。(従来の「提言」から名称変更)

2022年度上半期のトピックス

不適切なNo.1表示、今期も「見解」8件
適切な調査に基づかないNo.1表示について、2022年1月に日本マーケティング・リサーチ協会がウェブサイト上に抗議状を掲載し、メディアでも取り上げられるなど話題になった。2021年度にはJAROでも不適切なNo.1表示を含む問題表示をしていた3件を審議し、厳重警告2件、警告1件を発信したが、今期も同様の事例があった。(前述の厳重警告2、3、4、5、6、警告7、8、10)
警告7のハウスメーカーの事例では、広告(地域のミニコミ誌)と広告主のウェブサイト上に、「コストパフォーマンス〇〇県内No.1」「地域密着型住宅メーカー〇〇県内No.1」などと表示されていた。表示の根拠となる調査は、企業名のみの選択肢から答えるイメージ調査であり、また、その調査対象者は当該ハウスメーカーの契約者とは限らない全国の人で、〇〇県在住者はわずかだった。
厳重警告5の事例でも、「初めて脱毛した人が選ぶ」「総合満足度」「継続して通いたい」などの項目について、ウェブサイトを見て回答するイメージ調査であり、景品表示法に抵触するおそれを指摘した。
参考 2021年度(通期)の審査状況 https://www.jaro.or.jp/news/20220707a.html

サブスクのように誤解させる役務提供契約に「見解」5件
実際には高額契約の分割払い1回分の支払額であるのに、サブスクリプションであるかのように誤解させる事例があった(厳重警告3、4、5、6、警告11)。
厳重警告5は男性用脱毛エステサロンで、広告には月々千円程度、最短2回と強調されているが、実際にサロンに行って説明を受けると、数万円のコースを契約し、36回払いにした場合の1回の支払額が千円程度というものだった。割賦販売法の個別信用購入あっせんに該当する事例だったため、「月額○○円」などと広告に記載する場合には、手数料等を含めた支払い総額、支払いの期間・回数、手数料の料率などを表示しなければならない。
警告11は月額数百円で最新の家電がレンタルできるという広告で、「サブスク」とうたい、必要なときだけ少額で利用して、いつでも解約できるかのような表示となっていたが、中途解約した場合、月額利用料金×残契約月数を支払う必要があるものだった。申し込み画面には月額と契約期間(申立者の契約では5年)が表示され、最終確認画面には解約時に違約金が発生する旨の表示があるが、違約金がいくらになるかは書かれていない。それを知るためには、サイト最下部の「サービス利用規約」内にある中途解約金へのリンクまで行かなければならなかった。
参考 本件の詳細については、12月9日(金)にウェブサイトで公開予定の「審査トピックス サブスクを装った役務提供契約」に掲載。(機関誌『REPORT JARO』12月号掲載記事)

二段階契約による悪質な定期購入
今期、定期購入契約の苦情件数は153件(前年同期144件)で減少が見られないが、そこへさらに、新しいタイプの苦情が寄せられた。回数しばりのない定期購入契約で誘引しながら、契約の申し込み直後にお得であるかのようなオファーを表示して契約させ、2つ目の契約が回数しばりのある契約となっているというものだ。(厳重警告2、警告8)
警告8は、「回数しばりはなく、いつでも解約可能な定期コース」という化粧品を購入すると、注文完了後の画面に「ちょっと待って!」「今から○分間限定の特別キャンペーン」「無料で1箱プレゼント」と表示され、それも購入すると2つ目の契約が回数しばりのある定期購入契約になっていた、というもの。申立者が商品到着後に定期購入の解約を申し出ると、「後から定期しばりがある商品に変更しているので、あと3か月は定価で届ける。解約の場合は違約金を支払え」と言われた。後から表示されたオファーの条件等を後から確認しようとしても、最初の商品を購入した後に出る画面なので確認することができないというものだった。
今年6月1日に施行された改正特商法では、事業者が定める申し込みフォーム等に基づいて申し込みが行われる場合、申込最終画面で契約条件を網羅的に表示する義務が新設された。