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2020年10月5日お知らせ消費者向け

[2020年6月~7月]
新型コロナウイルス関連の広告・表示へのご意見

はじめに

JAROには、新型コロナウイルス感染症やそれに伴う自粛、新しい生活様式などに関連したご意見が1月末から寄せられており、すでに5月7日[1~3月分]、7月13日[4~5月分]を公表した。今回、6~7月分をとりまとめたので、1月からの推移を含め紹介する。

【抽出方法】
 キーワードにて、新型コロナウイルス感染症およびその関連事項(外出自粛、3密、マスク、除菌など)を含むご意見を取り出した。

【対象のご意見】
 本レポートで対象とした苦情は下記のようなものである。本レポートでは「コロナ関連ご意見」と表すが、JARO統計上は「苦情」に含まれる。
 ・新型コロナウイルスやそれに類する用語(ウイルス、新型肺炎、コロナなど)を明示・暗示した広告に対するもの。
 ・新型コロナウイルス感染症への対策等に供すると思われる商品・サービス(マスク、除菌剤など)
 ・新型コロナウイルスに関する表示・表現はないが、感染症による環境変化などにより、広告への意見を述べるもの。

月別苦情件数

新型コロナウイルスの影響が広がるに連れて、JAROに寄せられる苦情全体が増加した。特に、7都府県への緊急事態宣言が出された4月7日から件数が増え、4月の苦情件数は前年度比165%に上った。

1月832件、2月766件、3月880件、4月1032件、5月986件、6月967件、7月1248件。2019年は1月713件、2月722件、3月775件、4月627件、5月704件、6月811件、7月913件。1月から7月の合計で2020年は6711件、2019年は5265件、前年比127パーセント。
月別苦情件数のグラフ。

「コロナ関連ご意見」月別件数

「コロナ関連ご意見」は4月をピークにその後減少し、感染者が再び増え始めた7月に増加に転じた。3~4月には「表現」に関するものが多かったが、その後「表示」に関するものが上回っている状況である。

コロナ関連ご意見月別件数の表。コロナ関連ご意見は1月2件、2月28件、3月88件、4月223件、5月103件、6月66件、7月109件、1月から7月の合計619件。

◆「表示」とは
新型コロナウイルスへの効果を標ぼうするもの、新型コロナウイルス等と明示・暗示するもの、マスクの高額販売、欠品しているのに広告に掲載、など。(違反するかどうかの判断をしていないものも含まれる)
◆「表現」とは
新型コロナウイルスの感染拡大や外出自粛の状況に関連付け、広告表現が不適切などとする苦情。

月別件数のグラフ。

内容別件数

6-7月期に増加したのは「対象範囲を誤認させるもの」「表示その他」「マインドに関するもの」である。

内容別件数の表。6月から7月に多かったのは対象範囲を誤認させるもの26件、表示その他39件、マインドに関するもの19件など。

複数媒体のご意見があるため「コロナ関連ご意見」総件数と一致しない。

内容別で多かったもの

表示その他(優良誤認・有利誤認)

「表示その他」39件のうち「優良誤認・有利誤認」と思われるものが22件を占めた。内訳は「マスク」6件、「交通レジャー」6件のほか、除菌関連商品、通信サービス、健康食品などがあった。

≪6-7月のご意見≫

●県内在住者限定の超格安キャンペーンに申し込み、予約を受け付けた旨のメールを受信したが、その後一方的にキャンセルされた。同様の人が多いらしくネットで炎上している。虚偽広告ではないか。(宿泊施設)
●格安航空券予約サイトで予約した飛行機がコロナの関係で欠航となったが、その返金手数料が高い上、返金は3カ月後と言われた。欠航時にそのようなことがあるとは、申込前のサイト上では見ていない。
●宿泊施設の折込広告に「応援キャンペーン」「通常よりも5,000円引き」とうたっているが、通常価格が普段よりも高く設定されており、実際は5,000円引きではない。
●消臭性、調湿性があると表示されていたが、よく見ると一部の素材の効果だと小さく書いてあった。マスク自体に効果があると誤認させる。(マスク、通販サイト)

対象範囲を誤認させるもの

「除菌関連商品」20件、「空気清浄機」2件、「雑品(除菌剤除く)」1件、「教室・講座・スポーツクラブ」1件、「除菌・消毒サービス」1件など。

≪6-7月のご意見≫

●さまざまな雑菌に効果があるように宣伝しながら、画面隅に小さな文字で「すべての雑菌に効くわけではない」と逃げを打っている。商品についても具体的にどのような効果があるか科学的根拠を示さず、一方で体に害になるものは含んでいないとあおっている。(※)
●99.9%除菌できるとうたったスプレーをテレビで宣伝していた。当該商品を利用すれば感染しないような表現は、コロナ状況下で問題があると思う。
●そもそも、菌とウイルスではその特性も違い、抗菌でウイルスを不活性化できる根拠はないにもかかわらず効果あると言い切っていて、危険ではないかと思った。


この項目については、1-3月期、4-5月期と比較してご意見の内容にあまり違いはなかった。

※業界によっては「除菌」の表示をする場合の自主基準があり、全ての菌種・菌数について実証されているかのように誤認させないよう、全ての菌を除菌するわけではない旨の表示をするよう規定している。

コロナ下のマインドに関するもの

コロナ状況下の気持ち(不安、うんざり、イライラなど)を述べるご意見である。

≪6-7月のご意見≫

●大雨やコロナで頑張っている人が多い中で、頑張らないよう訴えるコピーは適切ではないしタイミングが悪い。
●明るい気分になりたいからバラエティ番組を見ているのに、凄惨な事件を扱う動画の広告が入る。コロナ下であのような暗いドラマを見たくない。(動画配信サービス)
●現在の状況で災害をテーマにした映画やドラマのCMを流すことをやめてほしい。不安で見られない人もいるのに平気で流す神経が分からない。
●タレントに替え歌やカバーをさせる広告が多く、外出自粛でテレビをよく見ているので、こう頻繁だとうんざりする。
●CM冒頭の音の大きく、怒鳴るような言い方が不快だ。コロナ禍でただでさえイライラしているのでこのような方法はやめてほしい。
●人の死を扱う広告はコロナで苦しんでいる時期に見たくない。


1-3月期は、マインドを述べるようなご意見はあまり多くなく、感染拡大の懸念や不安から「広告をやめるべき」「まねをしたら困る」などというものが目立つ。マインド絡みではコロナで子どもの心が弱っている時期という理由でたたく表現をやめてほしいというもの、寄付を募る広告における凄惨な状況を今は見たくないというものがあった。
4-5月期は、緊急事態宣言が出されるなど外出自粛が求められ、コロナ疲れによる「うんざり」というご意見や、「広告するなと言っているだろう」などと感情的なご意見が見られた。

媒体別件数

「コロナ関連ご意見」を媒体別に見ると「テレビ」が4割以上を占め、苦情全体と比較して6ポイントほど高くなっている。「折込」「新聞」も高めである。

複数媒体のご意見があるため「コロナ関連ご意見」総件数と一致しない。

商品・サービス別件数

複数媒体のご意見があるため「コロナ関連ご意見」総件数と一致しない。

商品・サービス別で多かったもの

除菌関連商品

コロナ状況下における「ウイルス」「除菌」などの表示により、新型コロナウイルスに効果があると誤認を与える、意図的に誤解させようとしているといったご意見が寄せられている。購入に至っていない人が多く、企業の表示に対する姿勢に意見を述べるものが目立つ。


≪6-7月のご意見≫

●「ウイルスが心配」などと出演者が述べており、あたかも新型コロナウイルスに効果があるかのように宣伝している。
●エレベーターのボタンに直接液体を吹き付けていたが故障のおそれがある。気持ちは分かるがみんなが使うものなので、このような使い方を推奨することは問題だと思う。
●99%除菌できると表示しているが、広告主に確認すると新型コロナウイルスには効かないと言う。この時期にアルコール除菌と言われると、殺菌効果があると思う。
●飲めるくらい安全などとうたっているのは問題ではないか。


1-3月期には、「99%」「菌」「ウイルス」とうたうことで新型コロナウイルスへの効果を暗示している、小売店の折込広告に表示されていたが未入荷(または売り切れ)だったなどというご意見、4-5月期には、アルコール濃度が不明瞭、除菌の対象が不明瞭、殺菌とうたいながらそのレベルではない商品である、といったご意見が寄せられた。

交通・レジャー

≪6-7月のご意見≫

●県内在住者限定の超格安キャンペーンに申し込み、予約を受け付けた旨のメールを受信したが、その後一方的にキャンセルされた。同様の人が多いらしくネットで炎上している。虚偽広告ではないか。(宿泊施設)
●格安航空券予約サイトで予約した飛行機がコロナの関係で欠航となったが、その返金手数料が高く、入金が3カ月後と言われた。欠航時にそのようなことがあるとは、申込前のサイト上では見ていない。
●宿泊施設の折込広告に「応援キャンペーン」「通常よりも5,000円引き」とうたっているが、通常価格が普段よりも高く設定されており、実際は5,000円引きではない。
●旅行比較サイトが登録施設からの手数料が上乗せされていないかのように表示しているが、実際には他の旅行会社同様、登録施設から手数料を取っている。ユーザーに誤認されると同時に比較広告の不当表示にあたるのではないか。


1-3月期の後半(3月ごろ)から外出自粛が呼び掛けられ、4-5月期には緊急事態宣言が出された時期であるため、アミューズメント施設、旅行、映画、イベントなどの広告に対して「なぜこの時期に広告するのか」といったご意見が寄せられた。5月になると広告出稿が控えられ、ご意見も減少した。6-7月期になるとGoToトラベルに関するものが寄せられた。

マスク

≪6-7月のご意見≫

●マスクの通販サイトに消臭性や調湿性があるなどと書かれているが、スクロールして下まで見ると一部の素材のみの効果であると小さく表示されており、マスク本体に効果があると誤認させるような内容ではないか。
●ウイルスが侵入しない旨が書かれているが、飛沫は防げてもコロナウイルスは特に小さいので技術的に無理である。しかも非常に高額。コロナの状況下で悪質だ。


1~3月期にはマスクの欠品・遅延、おとりに関するご意見が多く、4~5月期にはマスクの価格や品質・素材、原産国などが目立った。6~7月期になって涼しいとうたうアイスシルク、アイスコットンなどの素材、通気性などの性能・効果、米国FDAやEUのCEマークなど認証などへの疑義が寄せられた。

行政・公共・その他啓発

≪6-7月のご意見≫

●行政機関のテレビCMで、新型コロナ関連の情報を「詳しくはホームページへ」と言っている。高齢者はスマートフォン等を持っていない人が多いので確認できない。CM内で表示をしてほしい。
●行政が熱中症予防のため、屋外で十分な距離がある場合はマスクを外すことをウェブサイトで呼び掛けているが、屋外や距離といった前提条件は小さな文字で目立たず、スマホで見ると見落としてしまう。スポーツ教室でこの表示を誤解してマスクをつけない人がいたが、感染拡大を助長する内容ではないか。
●観光協会のウェブサイトに「コロナ感染者が少ない〇〇県への修学旅行」と書かれているが、不謹慎な表記である。
●新型コロナウイルスで精神的に参っているので、暗い雰囲気の公共広告は流さないでほしい。


4~5月期は医療従事者の子どもへの差別防止を呼び掛ける行政のCMに、「保育士やタクシー運転手を取り上げたのは配慮に欠ける」「一部の事象であり多くの保育士等はそのようなことをしていない」といったご意見が寄せられた。また、過酷な状況の子どもが出てくる公共広告に「趣旨は理解するが今は見たくない」とのご意見もあった。

食品・飲料・健康食品

≪6-7月のご意見≫

●健康食品のテレビ通販CMに出てくる愛用者風の女性は、芸能事務所に所属するタレントである。広告主に問い合わせたがタレントとは認めず同姓同名の別人だと言い張られた。コロナで仕事が休みになりテレビを見る機会が増えたが、このCMを見るたびにムカムカする。
●CMの映像が激しく動き、特に高齢者にとっては見ていて煩わしいものになっていると思う。皆が見るテレビCMとして出すのであれば、高齢者が見ても負荷のかからない内容にすべきである。
●この会社は感染拡大を抑える活動としてソーシャルディスタンスを呼びかけているが、外出自粛時に不謹慎な行動をしたタレントをCMで使っている。
●CM内の飲食シーンで指を舐めるのが気持ち悪い。コロナの状況下に舐めた指であちこち触るのかと思うと不衛生である。
●感染防止の観点から大皿の食事は小皿で提供するよう推奨される中、大皿料理が出てくるCMは疑問だ。


1-3月期には新型コロナウイルスと明示・暗示した食品や健康食品へのご意見が見られたが、6-7月ごろには、手に付いた食べ物をなめたり、大皿で食事することの懸念など、広告表現がへのご意見がほとんどとなった。